近藤久美(こんどう・ひさみ)さん

学校の授業で兪募穴治療を教わったときに先生が藤田六朗さんが兪募穴についての仮説を提起していたと教えてくれた。

そのことを調べたいと思いネットで検索していたら昭和37年に全日本鍼灸学会誌に掲載された近藤久美(こんどう・ひさみ)さんの「私のみた兪穴募穴」に遭遇した。

それを読んで兪穴や募穴の研究には藤田六朗さんや芹沢勝助さんといったビックネームの考察があると知ったとともに、兪穴と募穴との関係は経絡的な正経十二経脈の縦方向の関係よりも解剖学的・生理学的に理解できるとデルマトームの横並びの図を持ち出した近藤さんの考えに大いに興味を覚えた。

それで近藤さんの著書を探したら医道の日本から『鍼灸治療室』が出されていたので発注。

近藤さんはどうやら明治鍼灸柔道整復専門学校の出身だから私の師匠と同窓らしい。

兪穴や募穴を含めた要穴は二千年前の黄帝内経に説かれていたらしいが、そのあたりのことを昭和55年の日鍼灸誌に小野太郎さんが「経穴の本質」として書いているのも見つけた。

そして今日では鍼灸経穴は必ずしも黄帝内経の頃のように臓腑や経絡と結びつけずに理解している先生も少なくないらしく、古典的な考えは特に「臓腑経絡学説」と呼んでいることも知った。

この小野太郎さんの所属の「東方会」というのは柳谷素霊とも親交があった経絡治療確立の立役者の一人・小野文恵(おの・ぶんけい)が創設したもので、二代目会長の小野太郎さんは文恵さんの肉親かも知れないと芋づる式に分かってきた。

鍼灸の学会誌が重要な参考資料となると気づけたことは収穫だ。その重要な資料を理解していくための基礎的知識、例えば特定の論者の考えが古典理論にあるのか現代医学にあるのか、それとも中医学にあるのかトリガーなどなのか?といったフレーム理解などを与えてくれているのが教科書を用いた学校の授業なのだと納得できた。