斉藤公子

人は人生の旅路の途上で後々時間をかけて解答を得るべき宿題を負わされるもののようだ。

先日の東洋文化研究所での東京学派に関する講演で「駒場哲学カルテット」とも称される「廣松渉坂部恵大森荘蔵、井上忠」の話を聞いてから「事的世界」だとか「関係主義」だとかいったことが一つのテーマとして脳裡に刻みつけられた感がある。

そんな折、今度は「斉藤公子さん」という名を人から聞かされた。何でも東京女子高等師範学校(後のお茶の水女子大学)を出た幼児保育者だったということなのだが、その数ある著書がまた興味を惹き付ける。

『ヒトの子を人間に育てる保育の実践』だとか『ヒトが人間になる』『生物の進化に学ぶ乳幼児期の子育て』。

共著も多い。『自然・人間・保育』(柳田謙十郎と)、『100人の"アリサ"が巣立つとき』(山崎定人と)、……。

どうやら斉藤公子は生物進化の井尻正二や三木成夫と交流があったようなのだ。井尻には斉藤公子を扱った著書がある。そして三木成夫は職場であった東京芸大で野口体操の野口三千三(『原初生命体としての人間』)と懇意にしていたらしい。

私が30代の頃に夢中で取り組んだエクササイズでも生物進化の思想が盛り込まれていたが、そのルーツを辿っていくならば、そうした「人との縁(えにし)が思索を拓く」ような「出来事」だとか人と人との関わり合いの「関係主義的」と呼び得るような過程があったのだろうと想像された。

この件は追って追究して行きたい。