プロレス社会学


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マイケル・R・ポールの『プロレス社会学』が届いた。

時間をかけて検討していきたいが、パラパラと眺めての最初の感想は「果たしてプロレスは社会学の対象なのか?」ということであった。

否、正確に述べるならば、プロレスという領域は社会学以外にも数多の専門的な学術分野によって光を当てることの可能な領域だと思われた。

確かに戦後の力道山の時代、日本人vs外国人の図式で日本人の一体感を扇動したのは社会学的な現象なのかも知れないが…

敢えて述べるならば、この本は著者であるマイケル・R・ポールの専門が社会学であるから「プロレス社会学」なのであって、それ以外にプロレスを社会学的に考察していく必然性は無いように思われた。

それを端的に反映していると思われたのが翻訳者である江夏健一さんの肩書きだ。江夏さんは早稲田大学の教授なのだが、ご専門は社会学ならぬ経済学、商学博士なのだ。

私も考える。ビンス・マクマホンらの経営者の繰り広げるアメリカン・プロレスの展開が「社会の秩序維持」を意図してのものだとは中々に考えにくい。むしろブルジョアジーによる利益の獲得過程だと理解したほうがスンなりと得心できそうでもある。

それならば、プロレスを扱う学術領域は社会学よりも寧ろ経済学のほうが相応しくはないか?

江夏さんも序文で「社会学者でない自分が専門外の本の翻訳をしたこと」を色々と弁明しているのだが、それも言外の戦略的な意図があり、プロレスを自らの専門である経済学的に研究する学生を求めていたとも解釈できるのだ。

今の言葉でいったなら「スポーツ経済学」もしくは「スポーツ経営学」ということかも知れないが。

そうした意味ではプロレスに纏わる学術分野としては「プロレス社会学」ばかりでなく「プロレス経済学=プロレス資本論」だとか「プロレス心理学」「プロレス力学=プロレス物理学」だとか無数に発展して行きそうだ。

私は今、道場での稽古生として「プロレス力学」「プロレス生理学」「プロレス心理学」に相当するあたりを実践的に学んでいるところであるが…

 

 

つづく